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阿波路を行く⑤ 〔句に込められた想い〕

更新日:

(13番 大日寺 → 17番 井戸寺)

宿は山の中にあるが、日の出の方角は比較的開けていたので、日の出を拝めると思ったが日の出時刻をかなり過ぎてもまだ出てこなかった。
写真は7時20分出発の時の朝日。

昨日は番外のお寺一ヶ所だけだったが、今日は十三番から十八番の近くまでは進みたいと思う。

交通量の多い、鮎喰川沿いの車道の横が遍路道になっている。

昨日の朝は山の中をとても気分よく歩いていたのだが、びゅんびゅん飛ばす車の横を歩いていると、こちらも理由なくイライラとしてきてしまう。

気分というものは道路状況一つで簡単に変わるものだ。

 

さんや袋にいつも入れている遍路用の地図ガイドブックを、左手で持ち、大きく振りながら歩くことにする。

右曲がりのカーブでは、対向車とぶつかる危険を本当に感じるからだ。地図ガイドの表紙を目立つ黄色にしたのは、こんな使い方を考えてのことかもしれない。編集元の遍路道保存協会さんの心遣いだろう。遍路道保存協会さんは、遍路道を表す赤い矢印マークを道の所々に付けてくれている。しばらくこのマークを見ないととたんに不安になってしまうほど、歩き遍路のありがたい味方だ。

 

●十三番札所 大日寺に到着

一時間弱歩いて、到着。「大日寺」という名称ながら、ご本尊は十一面観音。

大日寺の道の反対には、阿波の国一之宮神社があった。神社の別当寺として、大日寺がこの地に移転したらしい。

神仏習合の時代の名残を感じられる。

大日寺の住職は女性の方のようで「がまんの先には、いいことが待っている」という題の本を出しているらしい。受付に平積みにして置いてあった。
国籍は韓国の方で、ご主人の前住職が他界されてから、苦労されて後を継いだらしい。

 

十四番札所に向けて歩く。

昨日までは山道が続いたが、今日は里の道が主になりそうだ。

 

このあたりの街の中を走る用水路の水が綺麗で透き通っている。

時々、もう今から鯉のぼりを上げている家がある。

 

●十四番札所 常楽寺に到着

ほどなく、到着。八十八ヶ所中、唯一、弥勒菩薩がご本尊となっているお寺。

境内の地面が岩盤むき出しになっているのも他のお寺にない特徴。

 

ここで、初日に知り合った、石鎚山修験道の先達に再会した。

キャリーバックで焼山寺をどうやって越えたのだろう、と思っていたら、やはり無理だったようで、車道を使ってタクシーで行かれたらしい。キャリーバックを持ってこなきゃよかったとおっしゃっていた。

本堂の前で、また素晴らしい法螺を吹かれていた。(ちなみに、この方は嘘つきではありません)

納経所でお寺の方と、懐かしそうに話をされていた。やはり先達、顔が広いようだ。

 

●十五番札所 国分寺に到着

常楽寺からほどなくして到着。本堂が改修工事中で、他のお堂を仮本堂としていた。

 

境内に、軍服のような服にゲートル、旧日本軍のような帽垂れのついた帽子を被っている男性がベンチに座っていた。

てっきり、戦争で亡くなられたご英霊のご供養のために廻られているのかと思ったが、聞いてみると、ご自身の過去の行動を懺悔するために、ずっと廻り続けているとのことだった。

体中に梵字や経文などを彫り付けている。腕をまくし立てて、見せてくれた。自分で彫ったそうだ。

よく頬に傷関係の人に間違われるらしいが、そうではないとの事。

大きな珠の数珠を首からかけている。これも自分で作ったそうだ。野宿をしながら遍路の旅を長く続けている。

「サントウカが好きだ」と言われた。何のことかわからなかったのだが、よく聞くと、俳人の種田山頭火のことだった。(はずかしながら山頭火のことはよく知らなかった。)この方も俳句が趣味で、よく作っているそう。

財布から、十数首ほど俳句が書いてある折りたたんだ手書きの紙を広げて見せてくれた。
「この中に有名な俳人の句が4つ入っている。どれだと思う?」と聞かれた。他はご自分の作った句らしい。2つは見破ったが、他はわからなかった。この中であなたの一番の自信作はどれですか?と聞いたら、ある一句を指さした。

「 微笑みて 子供遊びて 花吹雪 」

この方の人生に何があったのかは、知る由もない。

子供さんやお孫さんにはもう長い間会えていないらしい。

「お遍路を何周廻っても、悟ることなんで何にもない。ただ足が痛くなるだけや」
とおっしゃっていたが、それでも、廻らずにはいられない何かが、この方を動かしているのだろう。

お歳はもう古希を迎えたそうだ。歯が抜けて赤く日焼けした表情は、年令よりも若く見えた。

俳句をブログに載せることの許可を戴かなかったが、ご自分でも会う人ごとに俳句を見せているようなので、かまわないかと思う。

ご容赦ください。

 

●十六番観音寺に到着 

 

街中にあるお寺。寺の塀に昔、浄財を寄進された方々のお名前と金額が書いてある。

当時は百円でこんなに大きな字を刻んでもらえたんだ。

 

十七番 井戸寺へ向かう途中、藤の花を熱心に撮影している外国人と出会う。

お遍路の袖なし白衣を大きなリュックに被せている。

アメリカのウィスコンシン州来た40代ぐらいの男性。

昔はエンジンのマフラーのメーカーに勤めていて、今はスポーツ関係のプロカメラマンをしているそう。

25年前に一度日本に旅行に来て、もう一度行きたい、と思っていった矢先、アメリカで四国のお遍路さんの特集番組が放映されたのを見て、これだ!とすぐに決心して決めて、日本に来たそう。

遍路旅専用の英語のガイドブックを持っていた。

「ツヤド」をして寝泊りしながら泊まっているという。「ツヤド?」発音がよくわからなったのかと思ったら、後で聞いたら、お寺の境内の軒下などを借りて寝かさせてもらうことをそう言うのだそうだ。ほとんどの日本人が知らない言葉だ。(注:ツヤド=通夜堂)

根っから日本が好き、という感じが伝わってくる方だった。

 

●十七番札所 井戸寺に到着

一夜掘りでできた井戸の伝説が残っているお寺。

アメリカの男性は、上の写真にある本堂手前の右の小さな小屋に泊めてくれる交渉を成功させた。

寺の方に聞いたら、ほとんど毎日、外国人の人がお寺に野宿させて欲しいとお願いに来るらしい。女性もよく来るらしい。
外国人の方がよほどバイタリティーがあると言っていた。

 

その後、昼食をとり、十八番恩心寺の近くにある宿へ向けて、約16キロをひたすら歩き始める。

 

午後2時30分で気温は27度。どうりで暑いはずだ。

街中から離れて、徳島市内の眉山の裏の山道を登る。

 

時折吹く風が心地よい。

 

やがて、市街地に入る。

途中、今までめったに見かけなかったコンビニが乱立しだした。交通量も多い。

 

遍路宿は午後5時までに入るのが、暗黙のマナー、と言う人もいる。

ただ今日は、あらかじめおそくなることはわかっていたから、その旨を宿に伝えてあるので心配なし。

 

人の多く住む街中を歩くのはあまり楽しくない。

川の透明度もぐんと落ちた。人が多いと、どうしても水は汚れてしまうのだろうか。

風景が楽しくないので、いろいろ妄想を考えながら歩いた。

あるテレビ番組の企画がひらめいた。

「コンビニお遍路」というのはどうだろう。

四国内の、スポンサーになったコンビニ全店舗を遍路して廻る。食料その他の買い物をしていいのはスポンサーのコンビニだけ。四国ではコンビニの分布が会社ごとに偏りがあるので、サバイバル感も演出しつつ、感動を呼び起こすのではないだろうか

コンビニのありがたさが身に染みてわかる内容になり、スポンサーのイメージアップにもつながるのでは?

妄想終わり。

 

 

線路の陸橋の上からカメラを構えて待ち構えている人がいた。

あと30分すると、電車が通過して美しい景色が撮れると言う。田んぼに夕日の反射光が輝いている。30分は待っていられないので、夕日の写真だけ撮った。

 

宿に着く直前。今日は自分の顔を撮っていなかったので。

 

午後6時少し前に、宿に到着。

先にお風呂を促されて、終わって食事に行くとまだその日宿泊の方々が2人残っていた。しばし歓談した。

初めての遍路で番外霊場を廻る人はあまり聞かないね、と言われた。

宿の主人に言わせると、今日は35キロ歩いたことになるそうだ。今日の距離感覚がこれからの計画作りに役立つかもしれない。