
あなたは
仕事や友人、恋人や結婚相手などを
自分の意志で選びましたか?
もちろん、そう、と
答えるかもしれません。
だれでも自分の選択で
人生を歩いていると信じているはずです。
でも――もし、
それらの選択が
本当はあなたの意志では
なかったとしたら?
「えっ、まさか!」
と思いますよね。
けれど、その“まさか”が
本当にありうるのです。
それは、
あなたの中の“他のだれか”が
人生の選択を操っているといっても
いいでしょう。
その"他のだれか"とは、
誰だと思いますか?
答えは
「ご先祖さま」です。
と言ったら、
あなたは信じられるでしょうか?
おっかないような、
とてもフシギな話ですが、
じつは、この現象は
オカルトでも霊感ばなしでもありません。
れっきとした
心理学の研究テーマなのです。
この学説を発表したのは、
スイスの精神科医、
レオポルド・ソンディ
(1893〜1986)。
彼の「運命分析理論」では、
人間の無意識には
祖先から受け継いだ
心理的な遺伝”があると考えられています。
つまり、
特定の先祖が抑え込んだ
欲求や願望が、
ある子孫の行動や選択に
無意識で表れる、というのです。
たとえば、
知らずに遠い先祖と
同じ職業を選んでいたり、
なぜか家系に
似た亡くなり方をする傾向があったり、
恋愛や別れ方まで
似てしまうこともある、
そんな繰り返しには、
ご先祖さまの
叶えられなかった想いが
関わっている可能性がある、
というのです。
病気などは遺伝子の側面から
説明がつくかもしれませんが、
特定の先祖と重なるというのは、
ソンディ博士は、
実際に多くの患者の家系を調べ、
何世代も離れた祖先と
似た性格や衝動が現れる事実を
数多く見つけました。
その中には、
小説の中で殺人犯の主人公の心理を
詳しく描写
先祖の影響を受けていたからだった、
それらの研究で、
血のつながりが遠く離れていても
消えない心の流れが続いている――
という驚くべき発見をしたのです。
ただ、残念なことに、
このソンディ理論には
解決法が説かれていません。
もしソンディが
神父さんやお坊さんだったならば、
「先祖の霊を鎮めなさい」
言ったかもしれませんけれど…。
では、どうすれば、
ご先祖さまのいいなりにならずに、
自分自身の意志で生きていけるように
なるんでしょうか?
少なくとも、
良い方の影響はいただいて
悪い影響はなるべく受けないように
できないでしょうか?
じつはそのための方法を
伝統的な習慣として取り入れている
民族がいるのです。
それは何をかくそう、
私たち日本人です。
というと
またまた驚かれるかもしれませんね。
日本人は、
特定の先祖とのつながりを
大切にします。
たとえば「戒名」です。
中国やタイ、ミャンマーなど
他の仏教国では、
亡くなった人に戒名をつける習慣は
ほとんどありませんが、
日本だけは祖先一人ひとりに戒名を授け、
命日ごとに手を合わせ、語りかけます。
これはまさに、
ソンディ理論でいう
“祖先との心理的つながり”を
大切にする習慣です。
日本人がこういう習慣で
先祖のよい徳を受け継ぎながら
悪い影響を和らげられたからこそ、
資源もなく、戦争で負けたり、
また日本人ならではの
思いやりや優しさの気質に
こういった習慣が関係している気もします。
親は2人、祖父母は4人、
曾祖父母は8人…、
二十代さかのぼればなんと100万人!
だれにでも、ものすごい数の先祖がいます。

ソンディ理論によれば、
私たちの中には数えきれないほどの
先祖の“想い”
ということになります。
その受け継がれている想いを
感じることは、
なるはずです。
何をやってもうまくいかなかったり、
なぜか悪いことばかりが続く時は
お墓参りをして先祖に手を合わせるといい、
ってよくいいますが、
これもあながち迷信ではないのでしょう。
もちろん魔法ではありませんが、
先祖に手を合わせるという
日常の小さな習慣も、
心とカラダを整えるきっかけに
なるかもしれませんね。
合掌、なーむ(笑)