●朝5時20分、大麻比古神社に参拝する。
拝殿に向かう階段を登りきると、樹齢千年を超える楠のご神木が正面に鎮座していた。
まだ拝殿の扉は空いていなかった。
静寂に包まれた中で、礼拝する。
宿からも近いので、また後であらためて参拝することにする。
朝日の昇る方角を探す
じつは、今回の遍路旅でやりたいことが3つある。
①八十八ヶ所の霊場を歩いて参拝する
②出来るだけ毎日、日の出を拝む
③大地に触れる時間を持つ
①は言わずもがな。②は読んで字の通り。③は少し説明が必要。(後日説明します)
天気が良ければ、日の出の光を拝むように心がけることにする。
白く輝き始めた空の一角を目指して参道を戻るが、東には低い山が続いていて、その上にも雲が低く覆いかぶさっている。この周辺から日の出を拝むのは無理かもしれない。
途中、犬が独りで散歩をしていた。
野良犬?
呼ぶと、こちらに興味があるのか、おっかなびっくりの表情で立ち止まって見ていた。
(注:あとで、この近辺では野良犬が多くて問題になっている、ということがわかった。当然、野良犬だったのだろう)
石垣で作られた棚田の農道を上って、山の方を見ると、覆いかぶさる雲の上に光が集まってきている。
日の出の時間を40分以上過ぎたが、太陽が顔を出してくれない。しかし、顔を出さずとも、空の色、山、下に見下ろす町並みは、刻一刻と明るみを増して、太陽の色に染まっていく。
太陽は、すごい力を持っていると実感。
気温が9度と寒く、しびれを切らして、宿に戻ろうと歩き始めた瞬間、ようやく雲の上から、太陽が顔を覗かせた。
雲に少し隠れながらも、輪郭をはっきり確認できた。神々しさに、思わず手を合わせる。
宿に戻り、朝食を済ませた。
ふと見ると、大麻比古神社でお遍路の無事行満を祈願するお祓いをします、との掲示があった。
江戸時代、お遍路さんは大麻比古神社でお祓いをしてから、八十八ヶ所を廻る風習があったそうだ。それならば、ぜひ明日出発の時にやっていただこうと思う。今日でもいいが、やはり装束に身を包み、旅立ちの時にしていただくのがふさわしいだろう。
朝食後、お祓いの申し込みもかねて再び大麻比古神社へ参拝。今度は陽も高くなっていて、団体観光客で賑わっていた。
社務所に遍路のお祓いのことを聞くと、あまり受け慣れていないようで、中で確認した後、OKとの返事をもらった。遍路始めにお祓いを受ける人は、今ではほとんどいないようだ。
この神社の奥宮はバックの大麻山山頂にあるそうだ。登ってみたかったが、何のために出発を延ばしたのか、と考え直して、境内の遙拝所で参拝する。
その後、近くの、地元の人の御用達の喫茶店で昨日分のブログなどを書き、そこで昼食。
日替わりランチの味噌汁の中に、素麺がさり気なく入っていた。徳島だなあ、と感じられる味だった。(徳島の人はそうめんもよく食べるそう)
大麻比古神社で御朱印をいただくのを忘れていて、再度、社務所へ。
今まで、いろいろな神社仏閣をお参りしたが、御朱印を戴いた経験はなかった。昨今は御朱印が流行っているそうだ。思い出とともに残るので、いいものだと思う。
午後は、お遍路ガイドブックを読みながら計画作り、アメブロの使い方研究に充てる。
本当に徳島に来るまで、ほとんど準備をしていなかった、とあらためて反省する。
宿の部屋の窓から見える景色。
近くにあった、生卵自動販売機。
明日の行動計画を立てる。一日で十番切幡寺まで行くのは、とてもきつい、6番か7番あたりで一泊したほうがいい、と宿の方にアドバイスを受けた。
ぎっくり腰の具合が、明日からどう影響するか、未知数なので、極力無理は避けたほうがいいだろう。
全体の計画もおおよそ決めた。現地に到着してから決めるのも、おかしな感じだが。
基本は八十八霊場を軸にして廻り、その他に是非ともお参りしたいお寺などを数か所決める。
そして「弘法大師のご修行と奇蹟の足跡を辿る」ことを旅の主眼にしたい。
これは以前から一番望んでいたことだ。
また、廻り方として、
①急がない
②ピンときた場所は、予定を変更してでも立ち寄る
という方針で行きたいと思う。
気がつけば、いつも焦りの気持ちが出やすい自分にとっては、この2つを心がけるのは、ある意味修行になるかもしれない。
洗濯をする。
リュックの中身を最低限に絞ったため、毎日洗濯する必要がある。洗いは問題ないが、乾燥は乾燥機だけでは十分でない。特に用意してきた厚い靴下は一晩では乾かないだろう。
そのために、「へんろみち保存協会」編の公式ガイドブックにも載っていた、ドライヤーを使っての「洗濯物早乾き作戦」を行うことにした。
早く乾かすために、靴下をドライヤーの吹き出し口にすっぽりを被せ、パワー弱にして、しばらくするとすぐに乾きそうだ。
これはいい、と思って、つけっぱなしで一瞬、部屋を離れた。
戻ってくると、なんとドライヤーが止まっているではないか。
スイッチを何度も入れ直しても、コンセントを入れ直しても、動かない。
新品のドライヤーを買ったのに、初めての使用で、ヒューズが飛んでしまったのでは、、、。しかし、旅先では修理も交換もできない。
着る物の重量を減らすために、300グラムの重さのドライヤーを持っていく決心をしたことが裏目に出た、と悔いた。
これからの毎日、洗濯をどうすればいいか。
しばらくして、ダメと思いながら、再度スイッチを入れると、なんと正常に作動した!
吹き出しを靴下で覆うと、モーター音が苦しそうにうなるので、内部温度が上がるなどして負担をかけて、サーモススタットが働いたようだ。ドライヤーに罪はなく、使い方に難があったようだ。
ドライヤーの復活を心から喜んだ。
ちなみに、靴下を早く履ける状態まで乾かすには、内部を表にひっくり返すことを学習した。
(普段洗濯を自分でしない者にとっては、こんなことも新たな発見です)
今日も夕食に、宿特製の梅酒をいただいた。
明日からは、禁酒を信条に掲げた遍路旅が始まるので、しばらくの呑み納めとなる。
宿泊客の中に、若い尼僧の方がいらっしゃった。
剃髪も青白く、仏門に入られてから、まだ日が浅いのかもしれない。
いよいよ明日は出発だ。
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