夕食後、宿の部屋の明かりを消して、窓を開け放った縁側の椅子に座りながら、川の流れと、かじかの鳴く声を聴いていた。
日が落ちてまもない時刻、川向うの山の稜線が、暗くなりかけている空にはっきりと浮き出ている。
そのすぐ近くにとても明るい星が光っている。
宵の明星だろうか。
見ているうちに、その星は、だんだんと山の稜線の向こう側に消えていった。
手を伸ばせば触れてしまうような、静かに輝いている星も、絶えず動いていることを実感できた。
地球の大きさ、星までの距離を考えると、とてつもなくスケールの大きな運動だ。
宇宙の回転の中で、我々は、そこにへばりつきながら暮らしているんだ、と考えさせられる。
日が暮れて、星が出て、また日が昇る、そんなこと当たり前じゃないか、と言う前に、自然や宇宙の運行の不思議に対して畏敬の気持ちを持つことが必要ではないかと思う。
便利な世の中で、勝手に人間の方が、宇宙や自然の偉大さを忘れてしまっているだけなのだろう。