きもちコントロールってムズカシイ
今さらですが、こころをコントロールするって、むずかしいですね。
つい、ものごとを悲観したり、
すぐかッとなってしまったり、
何かにつけ、被害者意識を持ってしまったり、
だれでも、考えグセというものがあります。
でも、どんなタイプの考えグセでも、朝から晩までずっとそのままの状態でいるわけではありません。
だれでも、他にいろいろな面を持っているはずです。
しかし、ひとたびスイッチが入ると、数ある感情の中の代表選手が他の感情を抑え込んでしまうんですね。
その結果、よい方向に向かえばいいのですが、大抵はうまくいきません。
だれでも、そんな自分に「私っていつでもそう」と、ついコンプレックスを持ってしまいがちです。
しかし、そんな厄介者扱いされている感情でも、それぞれに役割が備わっています。
たとえば、
いつも悪い方に考えてしまう、という思考は、リスクに対して安全を確保する、という役割があります。いくらポジティブ思考がいいといっても、イケイケだけでは、危なすぎるからです。
一瞬でかッとしてしまうクセも、緊急時に動くための俊敏さに通じます。その出方を調整すれば、積極的に活動できたり、勇気の源にもなります。
ヒトの心は、いろいろなベクトルを持つ感情が補い合って、バランスを保っている、ということだと思います。
では、そのバランスをくずさないためには、どうしたらいいでしょうか。
6つの帽子があなたを救う?
いろいろ浮かんでくる、クセモノぞろいの思考をうまくコントロールするためには、「ルール」が必要です。
そして、そのルールは公平であって、わかりやすいことが条件です。
じつは、それにぴったりのものがあるのです。
それは「6つの帽子思考法」といいます。
この思考法は1985年に発表され、当初は会議をスムーズにすすめる方法として有名になりました。
たとえば、会議やミーティングで、力のある人の意見に影響されて、他の人がものを言えない、とか、
意見が対立して、いつまでたっても平行線のまま時間だけが過ぎてゆく、という経験はないでしょうか?
この思考法を使うと、ふしぎやふしぎ、そういったトラブルがなくなるというのです。
この「6つの帽子思考法」を発明したのは、イタリア人のエドワード・デボノ氏。
心理学者、コンサルタントなどさまざまな肩書をを持ち、思考に関しての独特な提案を世界に発信されています。
常識にとらわれない発想を生み出す「水平思考」の発案者としても知られています。
デボノさんいわく、
「考えることの最大の敵は、多くのことを一度に考えようとしすぎること」なので、
「考える時には一度に一つのことを考えるようにする」のが有効だそうです。
なるほど、言われてみればそのとおり。わかりやすい。
この思考法は世界中の大企業でも採用されているらしく、
某巨大IT企業では「6つの帽子思考法」を会議に採用したところ、会議に要する時間が今までの4分の1に減ったそうです。
デボノさんは、この思考法を個人で使うことも奨めています。
それでは、この「6つの帽子」によって、私たちの思考のバランスを調整できるか、試してみましょう。
意外とカンタン!
では、その方法を紹介します。
まず、準備するものは、、、何もありません。
帽子を6つ用意しなくていいの?と思われるかもしれませんが、必要ありません。
そして、やり方もとてもかんたん。シンプル。
2つの手順でできます。
まず、
➊あなたの思考を6つの帽子の色にたとえます。
その6色とは、白、赤、黒、黄、緑、青。
それぞれの色が表す思考は、
白の帽子=客観的な事実、データそのもの
赤の帽子=なんとなく好き、きらい、理由はないけど感覚的に感じること
黒の帽子=批判的な考え、リスク
黄の帽子=楽観的、希望的な考え
緑の帽子=これからの展望、時間をかけて創造していく考え
青の帽子=全体を見渡して取りまとめる冷静な考え
色のイメージと内容が似ているので、すぐに覚えられると思います。
そして、
➋ものを考える時に、「自分は今、何色の帽子を被っているか」と意識する。
以上
おおまかに言えば、たった、これだけです。
その効果として、
今、何色の帽子で考えているか、と意識することで、他の色の考え方もある、ということを思い出させてくれます。
その気づきが、思考の偏りをもとに戻してくれます。
実際の使い方としては、
バランスよく6つの色すべての帽子を被って(と想像して)考えてみるのもいいでしょう。
大切なことをじっくり考える時などはいいかもしれません。
また、6つを全てかぶらなくても、他にもいろいろ使い方はあります。
たとえば、
「あっ今、赤い帽子をかぶってるな(感情的になってるな)」と思ったら、白い帽子に替えて、あえて事実そのものを客観的に捉えてみるのもいいでしょう。
よさそうな話が舞い込んできて「やったー!」と喜んでいる時、黒い帽子をかぶって、あえてその話にかかわるリスクも想定してみるのも意味がありそうです。
また、未来になんとなく不安を抱いている時、あえて白い帽子や青い帽子を使って冷静に状況を考え、緑の帽子で将来の展望を描くこともできます。時々、黄色の帽子を使えば、前向きな発想が出てくるかもしれません。
使い方はいくつでも考えられます。
どんな使い方でも、「あえて」というところがポイントです。
「あえて考える」と意識すると、感情にハマって我を見失う、ということがなくなるのです。
自分を軌道修正することができます。
ヒトには良い方向へ向かう本能が
使い方次第では、この思考法はとても便利です。
さっそく使ってみようと思いましたか?
ただ、6つの帽子の中で、むずかしいと思われるのは、冷静に全体を取りまとめる、青の帽子かもしれません。
実際、会議で使う際にコツをつかむのに時間が要るのは、青の帽子のようです。
会議では司会者が「ここから黄色の帽子をかぶって下さい」とか、参加者全員に同じ色の帽子をかぶる指示を出していきます。司会者は常に青の帽子でリードしていかなくてはなりません。
なので、司会者の技量が「6つの帽子会議」の成果を左右するそうです。
しかし一人で試す時、青の帽子の難しさは、あまり感じないなあ、というのが印象です。
いろいろな視点の考えが出そろえば、自ずと進むべき道は見えてくる、という感じです。
会議では多くの意見をまとめるのに苦労しますが、個人の心の中はそれより、強い感情の影に隠されている考えを引き出す方が大変なのでしょう。
それができれば、あとは勝手知ったる心の中、という感じで、方向性はおのずと見えてくるようです。
思考のアンバランスを直せば、人間はだれでも、よりよい考えにたどり着く本能が備わっているのかもしれません。
その本能を引き出すツールとして使えば、効果は大きいようです。
本当に帽子をかぶってみたら、、
もし、この思考法が家族や親しい人の間で流行すれば、とてもよい関係を保てそうです。
さらに、本当に帽子をかぶって試せば、さらに効果はテキメンかもしれません。
たとえば、虫の居所が悪くてイライラしている奥さんが赤い帽子をかぶれば、ご主人は「危うきに近寄らず」で、無用なトラブルに巻き込まれないですむとか、、、。
地雷を踏まないための、平和活動にも貢献しそうですね。
シンプルなだけに、自分なりの工夫ができるこの思考法、一度試してみてはいかがでしょうか?
余談ですが、
帽子をかぶって考える、というと、早押しクエスチョン帽を思い出すのは、私だけでしょうか?
「ニューヨークへ行きたいか~!」
よく観てました。
おわり
参考資料:『6つの帽子思考法ーー視点を変えると会議も変わる』エドワード・デボノ著 川本英明訳 パンローリング刊