昔から、何かの節目になると、旅に出ている。
なぜだろう。
かといって、旅をしている間、楽しくて、満足しているというわけではない。
もちろん、旅ならではの楽しいことはある。
しかし、過去の出来事を思い出して後悔したり、望郷の念にかられたり、旅に出ても今までの殻を破れない自分にじれったさを感じたり、旅先では、あまり穏やかな心境でないことが多い。
しかし、長い間一ヶ所にじっとしているといつも、旅に出なければ、という気持ちがどこからか沸き起こってくる。
今回もそうだ。この遍路旅によって、何かをつかみたい、と思っている。
いつも旅に出る理由としては、行先に何かが待っている、という期待よりも、目に入るもの全てが毎日変わる環境の中に自分を置いて、心の中に隠れていたものを再発見したいという気持ちの方が強い。
もっとも、普段の生活で抑え込んでいたストレスを、発散させるためのガス抜きというか、せめてもの慰め、という面もあるが。
でも今回は、空海の残した聖地が待っている。遍路道を歩いて学ぶ多くのことがある。その道すがら、出会う多くの人がいる。
その多くのものから、何か、ヒントを受け取れるかもしれない、という期待を、併せて持っている。
もうすでにたくさんの出会いがあったのだが、その一つ一つが自分に何を伝えていたか、はっきりと意味がわかるのは、 旅が終わってからかもしれない。