伊予路を行く⑩ 〔霧の向こうで山が呼んでいる〕

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(60番 横峰寺 ⇒ 62番 宝寿寺)

昨夜の豪雨と雷はおさまっていたが、まだ小雨はぱらついている。

5時45分出発。

今日は横峰寺を参拝する。

標高は745メートル。かなりハードな一日になりそうだ。

かなり涼しい道を歩く。

 

所々に麦が黄色くなって実っている。そうか、これがうどんになるのか!

 

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横峰寺の鎮座する山は、雲に隠れて見ることができない。

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自撮り棒はすでに壊れてしまい、足摺岬の手前で送り返していた。

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誰もいない古い町並みを歩いていたら、横からインコが話しかけてくれた。

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山の麓は見えてきたが、その上はまだ隠れている。

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8時10分、山の登り口のコンビニで食料を調達し、登り始める。

朝から、横峰寺に登ることを照準に合わせて動いているため、山に近づいてくると、なぜか妙に緊張してくる。

歩いて参拝するだけなのに。なぜだろう?

 

新品のコカコーラ自販機の置き場があり、出荷前の自販機がずらりと並んでいた。

すぐ近くに四国コカコーラボトリングの会社がある。

 

かわいい柴犬を連れて歩いていたおばあさんから、すれ違いざまに飴をもらう。

さすがコカコーラの地元、コーラキャンディーだった。

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横を流れる川の水は、ものすごく透き通っている。昨日の雨が流れているのだろう。

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どんな汚れた水でも太陽の力によって汚れから切り離され、純粋な水となって、蒸発して空に上がる。そうやって、きれいになった水が雨となって地上に降り注ぐ。

それをまた汚してしまうかどうかは、人間の考え方次第だ。

人間の身体の中も、地球単位の循環で考えれば、水の通り道の一つでもある。

 

坂がだんだんきつくなってくるが、雨上がりの風が爽やかなのと、気温が低いことが幸いしている。

 

登り始めて約1時間半。まだ山の上は見えない。

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谷からの水がまさに滝のように流れている。

 

横峰寺まであと2.2キロの休憩所に書いてあった落書き。

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みんな旅をしながらいろいろ考えてるんだ。

これを書いた主は、19歳、と下に書いてあった。
年齢を問わず、境遇を問わず、誰でも今の自分より強くなりたいと思うものだ。特に厳しい旅に出ようとする人はなおさらだろう。

なぜ旅に出ると強くなりたいと思うのか?
それは苦しい旅の途中で、自分の弱い部分を知ってしまうからだろう。

空海もそうだった。

己のふがいなさに地団駄を踏んだり、橋の下で、あまりの寒さに一夜が十夜のように感じたり、決して空海の旅は、華々しいものだけではなかった。

数々の法力の事績や奇蹟の逸話が主だが、道沿いにはそれと一緒に、人間としての努力や苦労の記録も残されている。それらも含めて、私たちは空海を聖師と仰ぐべきではないだろうか。

 

横峰寺へ至る道は、歩く者に、心の内奥を振り返らせる何かを持っている、と感じた。

 

人知れず、山道の傍らに誰かが作った、箱庭のオブジェ。

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不思議と雨で濡れていても滑ることなく、確実に足を運ぶことが出来た。岩石の性質がすべりにくいのだろう。

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頂上近く、霧が立ち込めてきた。神秘的な風景。人は他に誰一人いない。

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短距離の間にかなり標高が上がる割に、比較的スムーズに登れたのは、かなり長い部分が石段になっていたからだろう。

普通の山道ならば、この傾斜はかなりきつかったはずだ。

何百年も前から、昔の人々が、ここを参道として調えてくれていたおかげだろう。

この横峰寺に至る道すべてが、素晴らしい参道となっている。

 

霧の中、巨大な山門が出現した。

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やっと、

●六十番札所 横峰寺に到着した。

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眺望はきかないが、深い霧が立ち込める境内は、素晴らしい峻厳な雰囲気に満ちていた。

横峯寺は、空海の生誕より120年ほど前、役行者が創建された。

その後、空海は、この横峰寺を拠点として石鎚山での修行を行ったと伝えられている。
また、少し上にある奥の院 星ヶ森から、天気が良ければ石鎚山を遥拝することができる。

この星ヶ森は、役行者が蔵王権現をはじめて感得したと云われている大変な聖地だ。

 

本堂では参拝者もそこそこいるが、気持ちを落ち着けて勤行ができた。

いつも山の中でしか聞けない鳥のさえずりが、本堂の屋根の内側の方から聞こえた。

とても小さな鳥だった。間近に見るのは初めてだ。

 

参拝を終え、納経所でご宝印をいただく。

年齢からして住職さんと思しき僧侶の方に書いてもらう。

星ヶ森の場所を教えていただいた。今日は何も見えないけどね、とおっしゃっていた。

一度、山門まで戻り、星ヶ森へ向かう。
星ヶ森まで参拝に行く人はあまりいないようだ。

 

星ヶ森への道を登りながら気がついた。

これは霧でなく、雲の中なのではないだろうか。

霧と雲の区別はよくわからないが。

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深い霧というのは面白い。

立ち止まると、先は全く見えないが、自分が進めば進む分だけ、先も見えてくる。こちらが動かないことには、先行きは見えてこないということだ。

後ろを見ると、やはり霧が立ち込めている。周囲を霧に包囲されたようだ。

 

星ヶ森に到着。

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写真を撮るのも、憚られるような、神々しい雰囲気を感じる。

20メートル四方ほどの空間が広がっている。

その奥に鉄の鳥居が立っており、その向こうは何もない空間だ。

晴れていれば、ここから石鎚山が正面に見えるという。

 

霧のおかげで全く見えないが、このあたりを漂う雰囲気は、まさに聖地そのものだと感じる。

人気は全くない。

いつもお寺の本堂で無音で唱えている勤行を、声を張り上げて唱える。

あたりは鳥のさえずりしか聞こえない。

そして後ろから背中を押すように、絶えず風が吹きつけている。

その風は途切れなく、ぐんぐんと力を身体に注入してくれているようだ。

普通の風ではなく、特別な力を感じる。

 

しばらく、たたずむ。

ここから石鎚山まで往復13時間半と書いてあった。

役行者も、空海も、この道を行き来して修行にあけくれたのだろう。

 

この鉄の鳥居は江戸時代にここに設置されてから、今も立ち続けている。

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星ヶ森の参拝を終えて、下界へと降りてゆく。

 

霧雨のような感じで雫が落ちてくるので、ポンチョを着た。

空気がひんやりとして、手先がかじかんで来たので、ポンチョを着る。体温が保たれて、ほっとしたような気持ちになった。
なんと、息が吐く息が白くなった。

どうりで手もかじかむわけだ。

 

六十一番 香園寺の奥の院に通じる山道に入る。

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下山してもまだ曇っている。

道沿いの腰掛けで昼食をとる。

30分ぐらいは座っていただろうか。誰1人として通らない。

 

歩いているすぐ横に、いきなり木の枝が落ちてきた。自然に落ちた枝が偶然のタイミングですぐ近くに落ちたのだろう。

ある地点から、一瞬にして気温が5度ぐらい上がったようにあたたかくなった。

山の上と下の風の境界線なのだろうか。

 

これでもか、というくらい、長い山道を歩いていると、突然、眼前に海と街が広がった。

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瀬戸内海のすぐ近くにいることを改めて思い出した。

 

途中、昨日会ったフランスの若者が追いついてきた。

昼食のパンを食べながら歩いている。

なんで杖が、そんなに短いのか?聞いたら、普通に使っているだけでこんなに減ってしまったということだ。

こちらの杖と比べてみたら、ほぼ半分になっていた。

見てる感じではそんなに強く地面に打ちつけてはいないようだ。

もともと割れやすい木だったのだろうか?

今日は西条駅で野宿するとの事だった。

 

道沿いの、六十一番奥の院にお参りする。

ここは滝行場で、不動明王が祀ってある。

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もう少し下りて、午後4時少し前に、

●六十一番札所 香園寺に到着。

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ご本尊は大日如来。

創建されたのは、なんと聖徳太子と云われている、とても古いお寺だ。

本堂を見てびっくり。これはオフィスビルではない。お寺の本堂です。

大きすぎて、写真のフレームに全体が入りきらなかった。

どういう意図でこんなに巨大な本堂を作ったのかわからないが、莫大なお金がかかったことだけは確かだろう。

参拝は中でできるようになっており、映画館のような固定式の椅子席があった。およそ700席ぐらいだろうか。

後ろ、右、左から内陣の護摩修法壇をとり囲むように参拝席が並んでいて、さながらの劇場のようだ。

まさに仏教エンターテインメントのステージだ。

正面に鎮座する巨大なご本尊は、明らかにこの新しい本堂と同時期に作ったものと思われる。

後で聞いたら、本当のご本尊様は見えない所にきちんと鎮座されているということなので安心した。

この広い暗い、誰もいない空間で、椅子に座って勤行する。

ほとんどの人が本堂の中に入らず、外から参拝しているようだ。

映画館のような椅子で勤行をしていると、何かいつもと調子が違う。

ただ、近代的であろうが、伝統的であろうが、真剣な祈りの気持ちがあるならば、お大師様、仏様のお力をいただけるはずと、お参りした。

 

参拝後、プレハブの納経所に行く。

そこでおかしなことを言われた。

「次の六十二番 宝寿寺は、裁判所の判決により四国88ヶ所協会から脱退し、今はお寺の運営はやっていない。にもかかわらず納経代や駐車場代を取ったりと、違法なことをしています。このお寺の並びに、六十二番札所の納経所を代わりに設置していますので、そこでご宝印と御影をいただいてください」ということだった。

???どういうことだ? 

六十二番札所のお寺がもうやっていない?にわかに信じられなかった。

たしかにこのお寺の近くに、真新しい、六十二番の納経所が建てられている。

しかし、ここでご宝印をいただいて、もしそれが間違いだったら、本当の六十二番のお寺のご宝印を戴くことができなくなる。(納経帳には、一つのお寺に1ページ分しかスペースがない)

迷った時は、スマホで検索してみる。

どうやら八十八ヶ所の住職さんの集まりの中でのトラブルが原因で、事態がこじれているらしい。

しかし、お寺自体は、宝寿寺が存在しているので、参拝者としては、宝寿寺にまず行ってみるのが妥当と判断して、新しい六十二番納経所には行かなかった。

と言うわけで、5時ギリギリになりそうだが、宝寿寺へと向かう。

●六十二番札所 宝寿寺に到着。

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ご本尊は十一面観音。こじんまりとした境内だった。

きちんとお寺は運営されていた。

六十一番で聞いた話とは、まるきり違った。

 

六十一番の納経所で宝寿寺には参拝するなと言われて行かなくなる人も多いと見えて、こちらのお寺では参拝する人をかえって大切にしているような感じだった。

六十一番と六十二番の間だけのトラブルではないだろうが、両寺の伽藍だけを見て感じた無責任な印象だと、どうしても宝寿寺が弱者で、苦しんでいるようなイメージを持ってしまう。

 

今までの経緯をまったく知らないの部外者は、ジャッジする資格はない。

ただ、どこを参拝するかに関しては、それぞれの判断に任せた方がいいように思う。

 

宝寿寺はちゃんとお寺として運営されていることだけは確かだ。とても親切に対応してもらった。

どこが家内制手工業的な、ゆるい感じの運営方針を感じた。

少し違和感があったのは、お寺の周りをバリケードにように、鉄の囲いでガードしていることだ。

なぜ、こんな風にしているのかは、わからなかった。

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このすぐ近くの宿に入る。

 

泊まりは自分一人だけ。

宿は女将さんお一人で運営している。

なんと、女将さんは、八十八ヶ所遍路と石鎚山参拝の先達をされているらしい。

 

夕食時、おかげをいただいた体験談と、さまざまの奇遇なご縁の話をお聞きした。

やはり真剣にお参りすると、驚くようなお手配をいただくものだ、ということを実感した。

じつは星ヶ森に参拝した後、石鎚山に行きたい、という気持ちが湧いて来ていたのだが、2000メートルの高山なので装備や服装の準備がなく、今回はだめだろう、とあきらめていた。

しかし、この女将さんが、石鎚山頂上でのご来光の時を写真を見せてくれた時、その強烈な光を見て、ぜひ行きたくなった。

 

相談してみると、石鎚山の頂上の山荘に一泊する方法を教えてくれて、十分可能であることを教えてくれた。

自分の考えだけでは計画もできなかったし、行けるとも思わなかっただろう。

 

頂上の山荘を管理している所に電話したら、はじめは本当に来るのか、信用されなかったようだが、石鎚の先達に教えてもらってご来光を拝みたい、と経緯を説明したら、理解してもらえたようだ。

ただし、山荘に連絡をとれる時間がもう終わっていて、明日にならなければ宿泊の予約が取れないが、たぶんOKだろう、ということだった。

 

意外な展開で石鎚山に行けることになった。

空海が本格的に修行された地、と聞く。

やはり、石鎚山には、行きたい。

ただし、さすがに全て歩きだと、あまりに時間がかかりすぎる。

石鎚山は八十八ヶ所以外の所なので、ロープウェイを利用することにした。

 

そして、余談というか、びっくりしたことに、この先達である女将さんが友人の家に招かれて、6日後に千葉へ行くというのだ。

しかもその場所が、私の自宅から、歩いて10分ほどの場所なのだ!

 

こんな偶然、あるだろうか?

1000キロ近く離れている場所で偶然泊まった宿の人が、数日後に自分の家のすぐ近くに滞在する、というのは。

 

この女将さんも、今まで、こういう偶然をたくさん経験してきたという。

 

やはりお大師様の手のひらの中に飛び込むと、お大師様コーディネートが必ず働くものなのだ。

それを教えてくれた。

今日もし、他に泊まり客がいれば、こんな話も出なかっただろう。

 

というわけで、石鎚山の山頂に泊まれた場合、当然、インターネット環境は整っていないと思うので、このブログの明日の更新は、たぶんできなくなります。

ご了承ください。

 

あなたとお会いできることを楽しみにしています。

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