街中なので、なかなか太陽を拝める場所を見つけられなかったが、ようやくあった。
7時20分出発
今日は晴れて暑くなりそうだ。
宿の近くの商店街のアーケードを歩く。
人がほとんど通っていない。まだ商店街は眠っているようだ。
よく考えたら今日は日曜日だった。
昨日、宿の女将さんに最後の札所まで何日ぐらいかかるかと聞いたら、今日を入れてあと4日あれば楽に廻りきれるだろう、ということだった。
まずはじめに、七十九番 天王寺へ向かう。
線路を渡る。
複線の線路を見たのは、本当に久しぶりだ。
白峰宮に到着
お寺の付近で標識を失い、少し迷ったら境内のような場所に出た。ここが天皇寺かと思ったら、崇徳天皇を祀る白峰宮だった。
七十九番 天皇寺の名の由来は、讃岐国で不遇の生涯を終えられた、崇徳天皇のご遺体が安置されたことから名前がついたそうだ。
これもご縁なので、先に白峰宮を参拝する。
青空の下、落ち着いたよい雰囲気を感じる。
二礼二拍手一礼で礼拝する。
崇徳天皇というと、鳥羽上皇、後白河天皇などとの皇位継承の争いの末、怨念を残して亡くなられたイメージがあるので、どんな所だろうと少し不安があった。
しかし、とても清々しい気持ちでお参りができた。
まさか神様と心を通じ合えるわけではないが、ご祭神は、気持ちよく、ここに鎮まられているのではないか、と、勝手に想像した。
参拝した時の、晴れやかな空と、爽やかな風がそれを物語っているかのようだった。
とても徳の高い人物だったのかもしれない。
続いて、天皇寺はどこかと探すと、なんと、白峰宮の境内の一角にあるようだった。
山門もなく、白峰宮の赤い鳥居がそれに代わっている。
●七十九番 天皇寺に到着。
ご本尊は十一面観音。
空海の創建によるお寺だが、寺名の通り、崇徳天皇のイメージが強いお寺だ。
納経所に行くと、昨日の宿で一緒だった、自動車で廻っているご夫婦がいた。
お互いにここで会うとは、とびっくりした。
続いて、八十番 国分寺へ向かう。
10時10分頃、
●八十番 国分寺に到着。
ここは聖武天皇が全国に建立した内の、讃岐国の国分寺。
本堂も重要文化財となっている。
ここのお手洗いを改修工事するための募金を募っていた。
境内全体が文化財指定なので新たに建物を立て直すのは手続きに時間がかかり、お金もかかるらしい。
八十一番 白峰寺へは山道を登っていく。
ここから2時間位の行程だろうか。
昨日同泊だった女性が、この道は「隠れた遍路転がし」だ、と他の人に聞いたらしい。
なんとなく、これから登る山の形が、石鎚山山頂あたりに似ているな、と思っていたら、案の定、中腹に石鎚神社があった。
うんうん。確かに距離は短いが、「遍路転がし」っぽかったかもしれない。
傾斜角度もなんとなく石鎚山に似ているのだ。
1時間弱、山道と格闘して車道に出る。
標高としては、すでにかなり上がっているはずだ。
この辺は、自衛隊の演習場になっている。
今日は日曜日なので、演習はないと思うが。
尾根伝いの高地の車道は、比較的、楽に歩ける。
小さな白い蝶がたくさん飛び交っている。(写真には写っていないが)
また少し山道に戻り、しばらく下ると、白峰寺の山門が見えてきた。
ほど近い山の中に、崇徳天皇陵がある。
四国でただ一つの天皇陵だ。
まずは天皇陵にお参りする。
立派な石段の上に、
●崇徳天皇陵はあった。
参拝する。
真っ青な空が広がり、周囲には鳥がさえずり、とても清々しい感じだ。
参拝すると晴れやかな気分になった。
やはり、崇徳天皇のもともと持たれていた、徳の高さと聡明さみたいなものが御陵の雰囲気にも顕れているような気がした。
あまり書くと、神がかりか?と引かれてしまいそうだが、何より、陵を取り巻く爽やかな風が、それを表現してるように思えた。
続いて、白峰寺の境内に向かう。
●八十一番 白峰寺を参拝。
白峰寺のご本尊は千手観音。
境内には崇徳天皇頓証殿(崇徳天皇の廟所)があり、そちらのご本尊は文殊菩薩だった。
やはり知恵のある徳の高い方をご本尊が象徴しているかのようだ。
午後1時10分ごろ、尾根伝いに下って、八十二番 根香寺に向かう。
アップダウンのある、尾根伝いの山道を行く。
昼休憩を取ろうと思うが、なかなか座れる場所が見つからずにズルズルと歩く。
風は全くなく、地面から、うわっとした熱気を感じる。ただ、木陰があるので、街中を歩くよりはずっと良いだろう。
ベンチを見つけて携行用食品で簡単な昼休憩を取る。
今日はうどん屋には巡り合えなかった。
讃岐の山奥の沢はこんな感じが多い。水が少ない地域なので仕方がない。
●八十二番 根香寺に到着。
ご本尊は十一面観音。
本堂に向かう回廊に、ものすごい数の仏像が奉納されていた。
参拝後、お参りの時、お経を読んでいた外国人に話しかける。
ガイドブックのローマ字表記の般若心経を暗記して唱えているそうだ。
フランスから来た人で、お遍路をする前に北海道のニセコでアルバイトを何ヶ月かしてから来たとのこと。
少し前に会ったフランスから来た若い人も、北海道で働いていたと言っていた。
それが1つのコースになっているのだろうか。
今日は近くの遍路小屋に野宿すると言う。
英語版のガイドブックを見せてもらったが、仏教や空海についての説明、宿や食事の事、善根宿や遍路小屋での野宿など、わかりやすく書いてある。
まとまっていて良いガイドブックだ。
このガイドブックを日本語訳にしたら、日本人にも人気が出るのではないか。
今まであったフランスの人たちは、概して真剣にお遍路をしている。(けっして他の国の人が不真面目だというわけではありません)
今日の宿を予約するために電話した。
ちょうどいい場所にある宿が満室だった。
仕方なく、次のお寺の近くにある天然温泉の宿泊施設まで歩くことにする。
午後3時40分ごろ、参拝を終えて、宿に向かう。
こんな草むらを歩くのも、まもなくさよならだと思うと…。
しかし、この道はずいぶん草深い。あまり人が通ってないようだ。
車道の方を通っているのだろうか?
残念ながら、今日はうどん屋には行けそうにもない。
自分なりに発見した良いうどん屋さんを見つける法則は、明日以降発表しよう。
午後4時でも、木に囲まれると、けっこう暗い。
車が全く通らない山道を下りながら、これから先のスケジュールを考えた。
地図を見ながら計算してみたら、ハイペースで行くと、なんと明後日29日には八十八番にゴールしてしまう、ということがわかった。
思ったよりも早い。
どこかで足を緩めて、少しずつ歩くか、それとも今のペースで歩き続けて29日にゴールを迎えるか。
ゴールした後も、いろいろな考え方がある。
そのまま、高野山にいらっしゃるお大師様にご挨拶に行くか、また1番霊山寺まで戻ってお礼参りをしてから、高野山に行くか、どちらのパターンもある。
一番霊山寺まで戻るのは、比較的最近始まった習慣だそうで、そうでなければいけない、というわけではないらしい。
歩いている途中、香川県人のゆったりとした気質についても考えてみた。
気候風土の影響ではないだろうか?
香川県全体の地図を持っていないので、どういう地形なのかが今ひとつわからなかったのだが、景色を眺めて感じるのは、低い山に囲まれた盆地のような地形だ。
そして平坦な土地が多く、人口の割には広々と土地を使えるのではないか。
そして山に囲まれて、強い風もあまり吹かず、静かで穏やかな気候が多そうだ。
そういう風土だからこそ、街の中もゆったりとしていて人もゆったりと落ち着いているのではないだろうか。
お国柄はその土地の気候風土に影響される、ということをあらためて実感する。
そうこうしているうちに、街に戻ってきた。
普通の住宅街を通り抜ける。
こんな細い道もある。
「の」をつければいいってもんじゃない。
なんと、このホームセンターの駐車場の一角も、れっきとした遍路道だ。
遍路道から、物置のショッピングもできてしまう。
突然、横に軽自動車が止まって窓が開き、缶のお茶を渡された。
車の中にあったからあたたまっているけど、と言われたが、本当にホットのお茶になっていた。
とりあえずお遍路を見つけたら、何かしなければと言う気持ちになるのだろう。
ヘトヘトになって、午後6時50分ごろ宿に到着。
体重は64キロに落ちたまま、安定している。
天然温泉の宿泊施設だ。
部屋は50メートルほど離れた、ワンルームマンションを改造した所だった。
明日はすぐ近くにある、八十三番から始まる。
う~ん。あと2日。