伊予路を行く13 〔野生との遭遇寸前?〕

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(65番 三角寺)

薄い雲がかかっていたが、それが幸いして、瀬戸内海の眺めとやさしくマッチした日の出の風景となった。

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朝食の時、この近くにある関川と言う川は、日本で1番石の種類がある川だということを教えてくれた。

石の標本も見せてもらったが、興味ある人が見たら、とても面白いのだろう。

また五葉松という松も見せてくれた。(この宿の名前は五葉松荘)

一つの花?に5つの葉がついていて、縁起がいいとされているそうだ。盆栽によく使われる松だそうだ。

普通の松の葉は触ると尖って痛いが、五葉松は痛くない。

女将さんのお父さんが山から採ってきて植えて、樹齢100年ぐらいだろうと言うことだが、高さ3メートル位になっていた。

(写真がなければつまらない情報ですね)

 

6時50分出発。

しばらく歩いていると、前方に何やら動く影が複数。

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よく目を凝らしてみると、野生のサルのご一行だった。

あたりに人家はなく、道の両側は森に囲まれている。

このまま歩いていって出会うと、多勢に無勢で人間には分が悪いかもしれない。

 

どうしようかと思いながら近づいて行ったら、向こうが察知して、サッと木の陰に消えていった。

いきなり出てきて飛びかかられると危険なので、効果はあるかわからないが、普段は使っていない勤行用の鈴を出して、鳴らしながら歩く。

何か人工的な音がしていれば、サルも近づかないだろう。

タケノコの食べ残しが散乱していた。サルのしわざだろうか。

 

この辺の旧街道は、細い道に古い家並みが続き、とてもいい風情だ。

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通学の中学生や高校生の自転車のスピードが速くでびっくり。

このあたりが緩やかな坂道なので、日ごろから足が鍛えられているのだろうか。

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少しだけ海が見えた。すぐそばを歩いているのに意外と海を見るチャンスが少ない。

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時々、花の風情も盛り込んでみました。

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車庫とのコーディネートも楽しんでいるようだ。

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まさに産地直送直販。

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やはり遍路道は国道でなく、旧道がいい。

色々な楽しいものを発見できる。

 

反射板で1枚。

 

歩きながら地図を見ていて、はじめて気がついた。

なんと、次の六十五番で伊予の国が終わりではないか。

てっきり66番雲辺寺までが伊予の国と勘違いしていた。

実際は、雲辺寺は香川県に入ることになる。今日の宿は徳島県なので、愛媛県とも今日でお別れだ。

 

苦しそうにランニングをしていた人が、すれ違いざまに、遍路道はあっちですよ、と教えてくれた。

 

少し標高が上がってきた。

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六十五番札所まであと4キロぐらいの所で山道に入った。

急勾配が続く。汗が出てくる。

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12時ちょうど、

●六十五番札所 三角寺に到着。

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ご本尊は十一面観音。

行基菩薩が創建したと云われている。

後年、空海が三角形の護摩壇で修法されたことにちなんで、三角寺という名前がつけられたらしい。

 

ひっそりとした雰囲気のお寺だった。参拝者も多くなかった。

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これで伊予の国の札所はすべて参拝したことになる。

六十六番方面の表示が見つからず、スマホのGPSでルート検索する。

一度高知で迷って以来、2度目のスマホ頼りだ。

表示にしたがって歩く。

 

田んぼのあぜ道に入ってしまったが、これで正しいらしい。

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そのまま田んぼの中をしばらく歩く。

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少し歩いて、遍路道とは違う道を歩いていたことが分かった。遠回りしてしまったようだ。

仕方がない。

お遍路休憩所でおにぎりの昼食をとる。

 

こんなものを見つけた。お遍路バージョン。

つい買ってしまった。

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少し下りたところに、椿堂というお寺があった。

参拝していると、若い男性が、高級外車をさっと乗りつけて、大師堂だけにお参りをして、すぐに走り去っていった。

ちょっと寄った、という感じだったが、真剣な表情でお参りをしていた。

こちらの人たちはお大師様のお参りが生活の一部になっているように感じた。

 

国道に出て、交通量の多い峠道に差し掛かった。

この峠を越えると徳島県に再度入る。

 

車道のトンネルの手前で境目峠の山道に入る。

ここから1キロで頂上だ。

この1キロで伊予の国ともお別れだ。

今まで伊予には一度しか来たことがなく、どういう土地柄か今までよくわからなかったが、とてもよい旅をさせてもらえたと思う。

 

1キロほどで徳島県に入った。

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徳島に入った途端に、すれちがった地元の人にあいさつすると、恥ずかしがっているかのように小声で返事をくれた。

外国人サイクリストが自転車で峠を登っていった。

 

森の清々しい空気がただよっている。阿波の国の雰囲気を感じる。

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峠を境に川が東の方へ流れている。

この川が吉野川に注いで、ひと月前にお参りした1番から10番あたりの札所の方へ流れていくのだ。

一周してきたなぁという実感が湧く。

 

午後4時30分 宿に到着。

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今日の宿は、有名な遍路宿で、ご主人はなんと90歳。

テレビの取材も何回も受けている。

この周辺やお遍路全般のことを、いろいろくわしく親切に教えていただいた。

食堂には沢山の資料、泊まった方などの写真が所狭しと貼ってある。

この地域は雪が降ると1メートルぐらい積もるという。

 

ご主人のお話を聞いて、今のペースだと5月の末日から2日ほど余裕を残して88ヶ所廻りを完了することがわかった。

それならば、前から気になっていた番外札所の箸蔵寺にも行けそうだ。

両親の実家にも近い所にあるお寺だ。

急遽、予定を組んで、明日は箸蔵寺へ行くことにした。

今日の宿泊は、先達お二人と、数日前に2時間ぐらい一緒に歩いたデンマークのデザイナーの女性が泊まっていた。

夜8時ぐらいまで、いろいろ話した。

 

●伊予の国 菩提門を振り返る

伊予の国は、阿波、土佐と比べて、人が多かった。

遍路道が経済の流通路と重なっている場所が多いのも、伊予路の特徴ではないかと思う。

伊予の国は昔から加工業が盛んだった。

加工するという事は、人が共同作業を行うということだ。

そこで人と人との関係が大事になってくる。

そんな中、他人への気配りに優れた人に多く出会った。

そういう方々から、人と関わる気持ちの差によって、自分も幸せを感じるか、相手も自分もいやな印象を残すか、どちらにもなり得る、ということを教わった気がする。

だれでも生活していく中には、一人で責任をまっとうすべき部分と、協力を仰がなければやっていけない部分がある。

その両方をそれぞれ認識して、混同しないことが大事なんだなぁと、教えてもらった気がする。

そういう意味では、出会った外国人たちの考え方も大いに参考になった。

他人を認めながらも自分のペースと個性を大切にする、ということが自然に身に付いている人が多かったからだ。

 

また、いろいろなシンクロが続いたことにも驚かされた。

偶然と言い切ってしまえばそれまでだが、ひょっとすると、シンクロというものは、いつも数多く起きていて、それに気づかないだけなのではないか、とも思う。

日常の生活から離れて、歩いて、参拝するだけに集中していると、自分の意識の向け方しだいで周りの事象がシンクロすることを経験できた。

ひょっとすると、だれでも意識を向ければシンクロ体験はどこでもいつでもできるのではないだろうか?

だから、現代心理学の基礎を築いたユングも、シンクロニシティという現象を、真剣に研究の対象にしていたのだと思う。
ただ、シンクロを数多く体験するだけで終わっては、何も進歩は生まれない。

シンクロに気づいて、ヒントをもらって、そこからいかに行動に移すか、それが出来てこそ、シンクロを活用できると感じる。

 

出発して1ヵ月が経ち、旅をすることに慣れが出てきたことも感じた。

つい新しい試みを避けて、慣れたことだけをしよう、という気持ちが出てくることにも気がついた。

「慣れ」は先入観という壁を作り出し、自分の限界を勝手に決めてしまう。

自分から限界を設定してしまう、この癖を乗り越えていくことが、可能性を伸ばす秘訣ではないかと思った。

 

ブログには載せなかったが、伊予路を歩いている間、今までの知り合いや、つながりのあった人と連絡を取りあうことが不思議と多かった。

こちらからも便りを送ったりと、久しぶりの交流も増えた。

 

伊予の国に入る時、伊予路を歩く中で、他を利することができれば、と書いた。

しかし、旅の途中では、いただいたご恩をお返しすることすらできなかった。

この旅の中での借りも、忘れていた昔の恩も、旅の後からでも返していくように心がけよう。

 

とりとめもなく、結論めいたこともなく、書いてしまった。

最後の国 讃岐は「涅槃門」だという。

どういう世界が待っているのか、見当もつかない。

空海のルーツに触れる聖蹟も多いと聞く。

それらはどんなことを示してくれるのだろう。

 

楽しみにしたい。

 

 

あなたとお会いできることを楽しみにしています。

…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…*…

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