奇をてらう番組?
ある日、某国営放送でおもしろそうな番組をやっていた。
番組名は『ミラクルカウンセリング』。
カウンセリング?しかもミラクル?、と気になったので、録画をして後で視ることに。
その内容は、世界各地の違った文化を持つ民族の老人に、日本人の抱えている悩みを相談する、というもの。
カウンセラー(?)として登場したのは、
・アフリカ マサイ族の長老
・オーストラリア アボリジニの老賢者
・中国 雲南省モソ族の女家長
など、ツワモノがそろった。
普通ならば日本人の悩みを聞く機会は、ほとんどない人ばかり。
マサイ族の長老は男前だ。
精悍な顔つき、体脂肪率がすごく低そうな褐色の肉体。
まさに厳しい自然の中で生き抜いてきた、という感じだ。ちなみにマサイ族の男性は成人する時、槍でライオンを仕留める習わしがあったそうだ。(今は槍投げ競技に代わっているらしい。)
アボリジニの老賢者の顔のしわには、4万年以上も狩猟生活を続けてきた民族の歴史が刻まれている。
モソ族の女家長はニコニコしているが、一家の家長、大黒柱としての貫禄たっぷり。働き手は主に女性、家長も女性、結婚形態は男性の通い婚、という、まさに女系社会だそうだ。
これはさぞや、甘えた日本人に喝を入れてくれるような、ワイルドでスパルタな回答が飛び出すだろう。
番組もそんな展開を期待して、わざわざ現地に取材に行ったんだろう、と思っていたのだが、、。
所変われば、考えもちがう
日本人のお気楽な(本人以外は?)悩みが順番に投げかけられ、それにたいする奇抜な回答には、笑ってしまった。
風土も歴史もまったく違うんだから、当然だろう。
あまりカウンセリングの参考にはならないかな、と思いながらも、おもしろく見ていた。
時には、なるほど、と唸らせる言葉もあった。
えっ!そんなにやさしい人だったの?
そんな中、眼からうろこが落ちたのは、26歳男性の悩みの時だった。
「恋愛経験がないのははずかしいこと?恋愛に興味がわかない」という男性。
「そういう人が今、増えている」とコメンテーター。
この悩みに対して、マサイの長老は、
「その年齢なら歩いていれば、女性から寄ってくるだろう?彼が心配だな。もしよかったら、森へ行って薬草をとってきてあげようか?」
長老が、どのあたりに問題があると思ったかはわからないが、その表情が印象的だった。
思ってもみない悩みに対して、バカにしたり、下に見る素振りはなかった。むしろ、男性のことを思いやる感じが見てとれた。
そして、さらに感動したのは、アボリジニの老賢者だった。
彼らには、そもそも『恋愛』という言葉がないらしい。
以下、老賢者の言葉(要約)、
「恋愛? ああ、『幸せ』のことか。それは魂のよろこびだよ。たとえば語り合っていっしょにお茶を飲むのもそうだ。
彼は人とちがったものの見方をしているんだね。かれの心が少し心配だな。ここにきて、いっしょに狩りに行かないか。
私と二人で出かけていろんなことを語り合うんだ。そうすれば悩みはなくなるさ。」
これは、胸にガーンと響いた。
何よりも本人の心や身を案じていた。
しかも、2人で旅に出て語り合おう、とまで。こんなに手厚いカウンセリングがどこにあるだろう。
この人たちは、日本人以上に民族の誇りを大事にしているはずだ。
だから、「恋愛して子孫を増やせ!」とお叱りを受けるぐらいに思っていたが、その真っ反対だった。
それは、ちがう民族の若者だったから?
でも、日本人が外国人から同じ相談を受けたら、人種に関係なく、その人の心を気遣う、という気持ちになれるだろうか?
他の回答の時、マサイの長老が言った。
「たぶん、日本人は伝統的な文化を失いつつあるんじゃないかな。だから悩みや問題が出てくるんだろう」
まさに見抜かれた気がした。
伝統的な文化や風土にしっかり根差しているからこそ、心が豊かになり、やさしくなれる、ということを教えてくれたような気がした。
日本人は最近、外国観光客から「親切」「やさしい」と評価されて、ちょっと鼻高々になっている所がある。
でも、形の「おもてなし」は優れていても、心の「おもてなし」は、この人たちと同じぐらいできるだろうか?
そんなことを考えさせられた、たのしい番組だった。
(感想のしめくくりがいつも大げさになりがちなので、反省)
その数日後、タイミングよく(?)はじめて受信料金の回収の人が訪ねてきた。
とつぜんの訪問にもかかわらず、やさしさをもって、こころよく受信契約に応じたことは、言うまでもない。
おわり